Safety Nipopon

活動実績紹介

防犯CSR取り組みレポート
元受刑者を従業員として雇用し、再犯防止に貢献。
北洋建設株式会社 様
2018年12月26日
今回のレポートは、防犯CSR活動の中でもかなり難しいとされる元受刑者たちを雇用し続けている北洋建設の小澤社長にお話を伺います。
例年と比べて暖かい札幌駅からタクシーで15分ほど、閑静な住宅街に北洋建設さんはありました。
防犯CSR推進会議レポーター(以下レポーター)

小澤社長が元受刑者を従業員に迎え入れ、犯罪の抑止活動に力を入れるきっかけになった経緯を教えていただけますか?

小澤社長

自分が生まれる前、創業社長である父親が始めたものです。人手不足の折に近くの刑務所に採用活動に行ったのがきっかけでした。元受刑者の従業員と普通に接しながら育ちましたのでまったく違和感はありませんでした。

レポーター

そうは言っても、実際にはご苦労もあるのではないかと思いますが?

小澤社長

確かに、父親が始めたころは周辺住民からの苦情や犯罪者を雇用している会社とはつきあいにくいなどの批判があったように思います。しかし、自分にとっては普通なことだった上、父親と同じ脊髄小脳変性症を37歳の時に発症し、余命数年との診断を受けたことが一つの転機になりました。このまま何もせずに終わりたくないと考え、これまでに累計で500人以上もの元受刑者を雇用し続けていることそのものが再犯防止という社会のお役に立っているのではないかと思い、さらに力を入れるようになったのです。今では手紙などが全国各地の刑務所から頻繁に送られてくるようになりました。

【レポーター】

実際に、元受刑者の方々と面談されてどのように採用を進めるのですか?

【小澤社長】

実際に直接出向いて面接して、本当に就職の意志が固いのか、どのような犯罪歴があるのかなどを聞き出します。強姦や婦女暴行など性犯罪者、放火歴のある者や、暴力団関係者は雇いません。性犯罪者は繰り返す傾向があり、ある意味病気ですので就労よりも治療が必要です。放火犯の場合も繰り返す傾向が強く、採用していません。
実際に、就職する意思を確かめるために、直筆の手紙を書いてもらいますが、本気度のない者も採用しません。会社で責任もって雇用する以上なんでもいいわけではないのです。入れ墨についてはほとんどの会社が雇用しませんが、当社は雇用しています。頭に入れ墨の者もいます。指の無い者も雇用します。当社にいた工藤会のヤメ暴が今では造船会社の社長というケースもあります。

【レポーター】

採用時点でもかなりしっかりふるいにかけている感じですね。

【小澤社長】

はい、このように覚悟を決めて身一つでせっかく採用しても短期間で辞めてしまったり、いつの間にかいなくなってしまったりと結局残るのは1割いるかどうかです。
採用が決まると旅費は全額支給します。準備金1万円と飛行機代です。また雇用後は、無一文で出所するため、働き始めても日々過ごすお金がないので、基本的に最初の給料までは、前借として2,000円札を毎日渡しています。
一度に給与が入ると使ってしまうという人には、本人がいいというまで、毎日2,000円札を渡します。中には1年以上になることもあります。

【レポーター】

2,000円札ですか?

【小澤社長】

はい、2,000円札は珍しいので、大切に使ってくれるだろうということと、日々の生活費が必要だろうからということです。一度に渡してしまうと使い込んでしまったりいなくなる可能性があるので、最初の給料までは毎日2,000円ずつなのです。

【レポーター】

色々な工夫をされているようですが、就職後にこれまでに、元受刑者たちがトラブルなどを起こしたことはないのですか?

【北寮長】

実際には多少のごたごたはありますね。部屋を掃除しない者には厳しく掃除やルールを教えますが、定着しないこともあります。小競り合いなどもあります。
例えば、工事現場にヘルメットを忘れた若者の場合、叱られたことで会社のトラックを盗んで畑に突っ込んでしまい、警察から連絡がありました。その倍賞なども大変でした。

【小澤社長】

こうした費用も全て会社で負担しています。これまでに約2億円以上を使いました。政府支援などもない中で大変なので鈴木宗男さんにご相談し、2年ほど前に法務省に掛け合って法制化できないのか検討してもらいようやく実現したところです。補助金をいただけるようになりありがたいですが、まだまだ足りていないのが現状です。

【北寮長】

この会社にお世話になることができて良かったと思います。犯罪者と言っても色々な事情があって、根っからの犯罪者ではない人たちもたくさんいるのです。
でも、一度でも道を外してしまったら、日本人は寛容ではなく社会が受け入れてくれません。実際に働く場もなくお金もなく、また犯罪に手を染めてしまう人たちもたくさんいるのです。少しでも再犯防止になればとの思いで取り組んでおり、これからも社長と一緒に頑張っていきたいと思います。

取材を終えて

平成28年12月には議員立法により「再犯の防止等の推進に関する法律」が施行されました。とはいえ、元受刑者を採用し再犯防止につなげるという活動は今の社会環境では一筋縄ではいかない取り組みです。
これまでの日本の制度では犯罪歴を隠して社会に溶け込ませようとする非開示の方法がとられています。もし履歴書に犯罪歴が書いてあったらまず採用されることはありません。
しかし、北洋建設さんでは独自の工夫によって元犯罪者、元受刑者らを積極的に会社の力として組み込むことで犯罪抑止に大きく貢献できていると感じました。
これからも、難病と闘いながら全国を飛び回る小澤社長やそれを支えるご家族や従業員のみなさんの取り組みによって、さらなる犯罪抑止につながるよう期待してやみません。