Safety Nipopon

活動実績紹介

防犯CSR取り組みレポート
大阪府警に協力。
安まちメール普及のために自社商品を提供。
株式会社うどんや風一夜薬本舗
2015年9月9日
しょうが飴、しょうが湯で有名な「うどんや風一夜薬」さんの防犯CSR活動をレポートします。
防犯CSR推進会議レポーター(以下レポ—ター)

こんにちは、よろしくお願いいたします。防犯CSR活動についてお話を伺いたいのですが、その前に、うどん屋さんではないのですよね?
とても歴史のある貴社の創業の由縁を教えていただけますか?

末廣

創業の地は島之内の玉屋町(今の大阪市中央区)という場所だったんですが、これまでにうどんは一度も売ったことはないんですよ。
私共の曾祖父である初代(末廣幸三郎氏)が明治9年に創業したのです。当時は、薬といえば漢方薬が主流な中、ドイツからは西洋医学も入ってきていました。医師であった曾祖父が北海道を訪れた時に、偶然立ち寄ったうどん屋で考えついたそうです。
中国の漢方薬の古い書物に、風邪の養生の方法として、風邪をひいたときは温かい汁物をのみ、身体を温め、そして漢方薬を飲むことによりその薬力をあげること、という記述があります。 当時日本に入ってきたところの西洋医学と、古くから伝わる東洋医学を学んでいた曾祖父は、風邪をひいた時は、温かいうどんを食べ体を温めこの薬を飲み、一晩さっと寝てかぜを治すことが養生の基本であると考え、生姜を使ったかぜ薬を生み出しました。
大阪はもともとうどん屋がたくさんあったので、この薬をうどん屋さんに置いてもらい、販売してもらったところ、大人気となり瞬く間に全国に広がりました。
当時は、化学調味料のない時代ですから、うどんの出汁は煮干しや鰹・昆布がたくさん入った栄養豊富ないわば点滴のようなスープです。
また、手打ちうどんは消化も良く胃腸が弱っている時にはもってこいの食材なのです。
アツアツのうどんを食べて体を温めて、この薬を飲んで、ぐっすり寝ると熱も下がり、風邪も治ってしまうということで、当時のうどん屋さんでは大ヒットとなったのです。
漢方医学的に理にかなった「アツアツのうどんとうどんや風一夜薬」のセットは、「かぜうどん」と呼ばれるメニューにもなるほどで、風邪をひいた当時の人はおうどんやさんに駆け込んで一晩で治していました。

レポ—ター

風邪薬をうどん屋さんで販売するという考え方には驚きました。当時は富山の薬売りや医師が処方するというイメージが強かったので、びっくりです。

末廣

漢方的には理にかなっており、うどん屋さんのメニューにも取り入れられて「風うどん」という風邪薬とうどんのセットメニューがあったほどなんです。

レポ—ター

明治9年というと、明治維新から間もないころですが、かなり斬新なアイデアマンだったのですね。

末廣

そのようです、当社の名前にもなっている「うどんや風一夜薬」という名前も当時からのものですが、古い看板には、「うどんや。風一夜薬」とうどんやの後に「。」が付いていました。

レポ—ター

なんと、「モーニング娘。」の「。」を明治初期にすでに使っていたということですか?

末廣

はい、そうですね(笑)。当時から革新的だったのですね。社名の由来はうどんを食べて体を温めて、風邪を一夜ぐっすり寝ることですっきりと直してしまう薬ということから、つけられて代々受け継いできています。
関東などのそばの文化の地域では、そばや風一夜薬と称して人気だったようです。 現代でもアツアツのうどんと、漢方薬の生姜を使用した風邪薬はよく理にかなった治療法であるのですが、当然うどん屋で薬は販売できません。今の法制度ではなんともなりませんね。

レポ—ター

なるほど、そんなに深い歴史があったんですね。140年近い歴史をお聞きしていると時間がいくらあっても足りませんので、そろそろ防犯CSRについてお伺いしたいと思います。防犯CSRに取り組むようになったきっかけはなんだったのですか?

末廣

今から3年ほど前に、大阪府警さんから防犯活動に参加してみないかと電話をいただいたのがきっかけです。セレッソ大阪のスタジアムでサッカーの試合の後などに、大阪府警が発信している安まちメールを普及させるため、当社の商品のしょうが飴と安まちメールのQRコードを記載した紙をセットにして無償配布しています。この安まちメールは、自分の欲しい地区を選ぶと安全情報や、犯人の特徴、検挙情報などが流れてくるんです。地域を広めに設定したら、すごくたくさんの犯罪情報が流れてきて驚きました。こんなにも犯罪が発生しているのかと。
このメールを多くの人が受信することで、犯人ももう逃げ切れないと思い追い詰めることができるのではないかと考えています。

レポ—ター

すぐに防犯活動を了承されて実行されていますね。多くの企業が躊躇することが多いなか、なぜすぐに協力しようと判断したのですか?

末廣

そもそも、自分たちが住んでいる街や地域の安全があってこそ今の事業ができているのです。これまで長い間、被害に遭ったことがないのですが、それは警察さんがこの地域の安全を守っていただいていたからです。そんな警察さんから当社に電話をいただいた時には逆にありがたいと感じました。それですぐに恩返しのつもりでお受けしたのです。

レポ—ター

地域の安全のために地域で生活するすべての方々が参加して、小さなことでも大きなことでも活動をしていくことが防犯CSRでは大切ですね。
警察への恩返しという考え方は初めて聞きました。素直に感謝し自分のできることを行う。なかなかできないことですが、それを実践されていて素晴らしいですね。
自社の商品を無償で提供されているということですが、もちろん費用がかかるわけですが、その点はいかがですか?

末廣

それは、逆ですね。

【レポーター】

逆ですか?

【末廣】

はい、何もしないで犯罪が増加し被害に巻き込まれたとしたら、それこそ回復には多大なコストがかかるのです。実害に遭われた方ならわかるのではないでしょうか。企業不祥事も同じ理屈で、対策にかかるわずかなコストを惜しんで何もしないでいることが、無責任であり、何かあった時には回復できないほど大変なことになるのではないでしょうか。そもそも損得勘定でできるものではないと思いますよ。

レポ—ター

なるほど、まさにその通りですね。CSR活動を経費と考える企業が多いのですが、安全への投資、社会への投資と考えればよいのですね。参考にさせていただきます。

末廣

いま安全な状態で仕事ができること、生きていけることそのものが丸儲けであると考えれば、もう儲かっているんです。(笑)

【レポーター】

今犯罪に巻き込まれていないことがすでに利益を得ているという感覚も素敵です。防犯CSRを推進する中でこうした感性が広がるようにレポートさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

取材を終えて

明治9年といえば1876年。日本で初めての株式会社と言われる坂本龍馬が作った亀山社中は1865年創業ですから、かなり先進的な取り組みをされていたことが分かります。1876年は三井銀行が誕生し、上野公園が開園した年であり、なんと、侍たちに「廃刀令」が出された年です。
日本初の株式会社がほんの150年前だったのかと再認識すると同時に、利益至上主義で不正を黙認することで起きてしまう不祥事や事件などは、本来の会社のあり方とは全く異なるのではないかと深く感じたインタビューでした。しょうが飴の手土産までいただいてしまい恐縮です。
末廣さん大変貴重なお話ありがとうございました!