企業は社会を前提としてその活動を展開します。企業にとって社会は、自らの商品・サービスの販売市場であり、人材の供給源であり、多様な取引先との出会いの場であり、そして持続可能な存立の基盤でもあります。
したがって企業は、その本業を通じて、社会に有益な商品・サービスを提供する一方で、社会の一員としての望ましい行動を期待されます。企業を軸に据えたCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)では、企業は自らを取り巻く多様なステークホルダー(利害関係者)の要請に応え、本業での貢献に加えて、本業以外の環境・社会・ガバナンス(ESG)の諸要素にも配意した行動を求められます。では、社会、特に地域社会や街という単位を軸に据えて、CSRを考えるとどうでしょうか。
地域社会・街の魅力を高め、将来にわたって発展させ、住み心地のよい生活環境を保っていくのは、地域社会・街に関与するすべてのステークホルダーにとって共通の責務です。ここでのCSRは、コミュニティー・ソーシャル・レスポンシビリティ(Community Social Responsibility)と呼べるかもしれません。そうした地域社会・街のCSRは、自治体や公的機関が第一義的に運営の任を負いますが、企業は地域社会の住民とともに、街の運営にも積極的な関与が求められるステークホルダーの一員なのです。
街のステークホルダーとしての企業は、自らが立地する地域社会から、安心・安全、利便性・快適性、豊かな人材・雇用力等の多くのメリットを享受します。こうした街の魅力を維持するうえで、ステークホルダーとしての企業の取り組みが役に立つのです。街の安心・安全を高めるための防犯CSRは、そうした企業のCSRと街のCSRが共鳴し、つながる活動の一つです。
企業が地域社会の安心・安全を率先して担うことで、その地域社会の信頼性が向上するとともに、取り組む企業への街・住民からの信頼が高まることも期待されます。社会から反応(Response)のあるCSR、その第一歩が防犯CSRなのです。
藤井良広